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2023年12月28日
一般看護師のための心不全緩和ケア看護実践モデル開発の道のり
東辻 朝彦(千葉県立保健医療大学 健康科学部)
私は心不全患者さんの終末期意思決定支援に不全感を感じており、これを解決するために終末期意思決定の体験を調査し、調査結果に基づいて看護支援を検討、緩和ケアの一部として組み込んだ看護モデルを開発しました。
終末期意思決定支援の不全感と患者体験の不明確さ
私は、臨床において終末期意思決定支援が上手く実践できないという不全感を持っていました。当時、他の医療者から「終末期なんて縁起でもない」や「専門家の仕事であって、私たちの仕事じゃない」と言われることもあり、解決策を探るために研究結果を探すようになりました。そして、最近になっても、心不全に関わらず専門資格を持たない一般看護師による実践が明確化されていないことや(Mitchell, 2020)、心不全における終末期意思決定は重要でありながら(Crosby, 2019)、患者の体験は十分に調査されていないことを把握しました。
実際の終末期意思決定を調査することで明確化された体験
私は、心不全患者さんの体験を理解する必要があると考え、外来におけるアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を調査しました。結果では「侵襲的治療との親密さ」や「患者と家族の意見の擦り合わせ」、「事前指示書によって与えられた検討事項」といった特徴的な体験が導き出されました。本研究は光栄なことに、令和3年度日本循環器看護学会研究助成および第19回日本循環器看護学会学術集会最優秀演題賞をいただきました。この場をお借りして、関係者の皆様には心から感謝申し上げます。
終末期意思決定支援を包含した看護モデルの考案と臨床応用
看護モデルとは、患者さんの状態や看護支援を体系的にまとめたものであり、看護師が観察点や評価方法を把握し、看護支援を導き出す際の参考になります。私は、実践を重視した看護支援構築手法である「看護支援包括的反復開発アプローチ」(Bleijenberg, 2018)を用い、調査したACPの体験に基づいて看護支援を検討し、緩和ケア看護として統合した看護モデルを構築しました。臨床における使い易さを重視し、ポケットブックなど紙ベースの資料を作成しました。また、患者さんが所持する冊子を準備することで、患者さん自身が考えたり、気付いたりする機会を持てるようにしました。そして、循環器病棟の入院患者さんと看護師、医師の協力を得て臨床応用を行いました。研究途中では様々な事態への対応が必要となり、臨床の奥深さと難しさを再確認しました。作成した冊子などは、今後皆様に配布できるように内容を洗練している段階です。研究結果は、学会発表や論文として公表し、より良い循環器看護に役立てます。これからも心不全患者さんのより良い人生のために、実践と研究の輪を広げることに精進致します。