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2024年3月6日
慢性心不全患者の重症化予防に向けた、対面及び電話による療養支援の効果
田上 京子(公益社団法人 日本看護協会 医療政策部医療制度課)
患者のセルフケア能力の維持・向上を図り、重症化予防を図るには、外来看護職による療養支援が重要です。そこで、慢性心不全患者を対象に看護師による対面と電話による療養支援を行い、その効果を明らかにしました。
患者のセルフケア行動の変化
入院医療と在宅医療の間に位置する外来の看護職には、患者のセルフケア能力の維持・向上を図り、地域でその人らしく暮らし続けることを支える役割遂行への期待が高まっています。特に高齢化に伴って慢性心不全患者が増加しており、医療と生活の双方の視点を持つ看護職の支援が重要になっています。慢性心不全は、患者のセルフケア能力を向上させることによって、生命予後やQOLの改善が期待できることから、外来で多くの療養指導が実施されていますが、現状では診療報酬上の評価はありません。そこで日本看護協会では、外来看護職による慢性心不全患者に対する療養支援の成果を示すことを目的に、2022年10月から2024年3月までの2年間を研究期間とし、65医療機関と共同研究を実施しました。
研究方法はクラスターランダム化比較試験とし、退院後早期に対面及び電話による集中的な療養支援プログラム(図1)を実施する医療機関を介入群、各医療機関の通常の診療・ケアを実施する医療機関を対照群とし、ヨーロッパ心不全セルフケア行動尺度日本語版(日本語版EHFScBS)を用いて、外来看護師の介入による患者のセルフケア行動の変化を把握しました。その結果、日本語版EHFScBSの総得点は、介入群では対照群よりも退院前に比べ、退院後3か月に有意に改善していました(図2)。
また、日本語版EHFScBSを「complying with regimen」「adapting activities」「asking for help」の3カテゴリに分類して分析した結果、「asking for help」に関する項目が最も効果を得ており、患者自身がセルフケア能力を高め、体調の変化を把握し、早めに医療機関へ相談・受診できている状況も推察されました。これらのことから、対面と電話による退院後早期の集中的な療養支援は、患者のセルフケア行動の維持に有効であり、重症化予防に資すると考えられました。一方で、退院後30日、及び3か月以内の慢性心不全による再入院には2群間で有意な差はなく、引き続き2年目の研究で再入院の状況を観察しています。
在宅療養指導料の算定が可能に
日本看護協会では本研究結果を根拠とし、令和6年度診療報酬改定において「心不全患者に対する看護職による継続的な療養支援への評価」を要望しました。その結果、慢性心不全患者に対する退院直後の支援を強化する観点から、在宅療養指導料の対象に退院直後の慢性心不全患者が追加されることとなりました。本評価を活用し、さらなる患者の重症化予防が図られ、看護の質向上につながることを願っています。